スクエアグランドピアノについて John Broiadwood & Son,London,1846 古典ピアノ研究家 うえだあや

スクエアグランドピアノについて John Broiadwood & Son,London,1846 スクエアピアノの形は、12~13世紀に広く使われたクラヴィコードが原型であるといわれています。イギリスでは、17世紀のエリザベス王朝時代に、箱形のバージナルが流行し、7年戦争(1756~63年)の頃、ピアノフォルテ制作の技術が入ってきました。その後、ブロードウッド社(1726年~)により、チェンバロの製作技術も取り入れられ、1783年に安定したスクエアピアノが開発されたのです。

さらに、アクションやハンマーにも改良の手が加えられ、1817年、ベートーベンに1台のグランドピアノが贈られました。彼はこのピアノをこよなく愛し、親しみをこめた書簡のやりとりをしています。ベートーベンの後期のピアノソナタは、ブロードウッド社のピアノによって作られました。

その後も、より美しい音へと研究は進み、1846年、弦の張力を平均化し、打弦点を定めるという快挙をなしとげます。このスクエアピアノは、その一番の黄金期に作られました。
ヨーロッパの音楽家、演奏家、ピアノ愛好者たちは、このピアノの姿、その個性的な響きに魅せられ、ショパンはこのピアノに曲をささげました。

しかし、現在使用されているような、大ホール用のモダンピアノへの移行につれて、かつてのチェンバロと同じように廃れていきます。
第1次、第2次世界大戦により、名品の数々が失われた今日、このピアノに日本で巡りあいオリジナルの音を聴けることは、感慨深いものがございます。

 

公式ホームページ:John Broadwood & Sons

スクエアグランドピアノ John Broiadwood & Son,London,1846
ベートーベンがブロードウッドに送った書簡
ベートーベンがブロードウッドに送った書簡
私の親愛なる友、ブロードウッド君へ
わたしがこのピアノをいただけるという、あなたからの光栄なる知らせを受けたときほど、喜びに感じたことはかつてありません。わたしはこれを、聖なるアポロン神に、わたしの精神の産物の中のもっとも美しいものを捧げるための神殿と考えなければなりません。あなたが手懸けた、この卓越した楽器がわたしのもとに届けば、すぐにわたしがそれより得た最初のインスピレーションの結晶を贈りましょう。あなたへの記念として。
わたしの親愛なるBよ―それがあなたの楽器にふさわしいものでありますように。

あなたの友にして忠実なる下僕
ルイス ヴァン ベートーベンより
1818年2月7日
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